Vol. 04 / 02 with カナイフユキ | un / bared
2021.06.09 un / bared

Vol. 04 / 02

Model : カナイフユキ – Illustrator / Zinester (https://fuyukikanai.tumblr.com)
Photography : ともまつりか
Text : Nozomi Nobody

 前回の続き。

 「なにが生きづらいですか」というわたしの問いに「普通を求められることですかね」と答えたフユキさん。変えられないこと・分かり合えないことの多さ、そして募り続けるもどかしさ、息苦しさ。フユキさんは「あまり希望は持てない」と言った。わたしはun/baredをはじめてからずっと考えていることを聞いた。

 「どうしたら変えていけると思いますか。なにが入り口になり得ると思いますか」

 フユキさんは「それはずっと考えてるんですけど、永遠の謎なんですよね」と言って少し笑って、Zineの話をしてくれた。90年代初頭のアメリカで、パンク・シーンから派生したライオット・ガール・ムーヴメントにおいて、若い女性たちが自分たちのシーンを作るためにDIYでZineを作りはじめたこと。そのカルチャーを知って、フユキさんもやってみようと思ったこと。そうしてZineを作りはじめたらたくさんの人と出逢ったこと。

 「すでにある大きな力に頼らないで、自分たちのために自分たちの手で、自分たちの場作りができたらいいのかなって思うんですよね」

 フユキさんのこの言葉についてずっと考えていた。
 「自分たちの場」
 自分たちの居場所。拠り所と言ってもいい。
 ひとはどうしたって孤独なものだから、わたしたちには安心していつでも帰れる場所が必要で、だけどそれがあらかじめ用意されている場合はたぶんあまり多くはなくて。

 これまでに自分たちのために自分たちの手でなにかをやってきたことがあるだろうか、と考えた。まっさきに思い浮かんだのはun/baredだった。わたしたちは確かに、un/baredという自分たちのための場を自分たちの手で作っているという実感がある。そうして何日かしばらく考えていると、わたしがこれまでにひとりで音楽を作ってきたことだってそれとまったく同じことなのではないかという考えがふっと浮かんできた。
 どうして気づかなかったのだろう。

 「すでにある大きな力に頼らないで」
 「自分のために」
 「自分の手で」
 わたしは音楽を作ってきた。それは思えば、自分で自分の居場所を作るための行為だったのかもしれない。
 自分という世界の輪郭を手探りで探し当て、それを少しずつ拡張し、外の世界との接触を試みる行為。そしてそのフィードバックを自分の世界に持ち帰り、また次の過程に向かっていく、その繰り返し。

 意志を表明することなのかなと思う。自分がなにを感じ、なにを考えているのか。なにが大切で、なにが苦しくて、なにを変えたくて、なにを叶えたいのか。
 体内に渦巻いているさまざまのその正体を、一度外に出してみること。表現すること。

 誰に媚びることなく、まさにライオット・ガールたちのように自分たちの音楽で自分たちの居場所を築いてきた仲間をわたしはたくさん見てきた。そしてそれは芸術的な意味での表現だけでなく、いま世界中で行われている社会的な運動、デモやオンライン上での発信だってまったく同じことで、声を上げ、意志を表明することで、そこに共鳴する仲間が集まり、広がり、それがさまざまな形で変化を生み出している。その姿と事実は希望そのものだ。

 意志を示し自己を表現することは思うに、社会との接続点を作ることだ。だから、それがすべてのスタート地点、“入り口”なのかもしれない。

 それがどんなものであれ、はじめはきっと孤独だし、というか表現なんてしている限りある意味ではずっと孤独であり続けるわけだけれど、フユキさんがZINEを作りはじめてたくさんのひとと出逢ったように、わたしが歌を歌う先々でひとと出逢い、ともまつと出逢い、こうしてun/baredをはじめてさらにまた出逢いがあり、Zineを通して出逢ったフユキさんともう一度出逢ったように。

 循環していくのだ。小さな点だったものが少しずつその輪を大きくしながら、巡っていく。たくさんのひとに触れて、面、つまり場になるんだろう。

 先の見えない日々の向こうにあるものを信じることは、簡単なことではないなと思う。だけど希望はある。

 それぞれの方法で。自分たちの手で。自分たちのために。
 その先に、その中に、きっと希望がある。

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