Vol.0 / 02 | un / bared
2019.07.19 un / bared

Vol.0 / 02

Nozomi Nobody
Nozomi Nobody
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Nozomi Nobody
Nozomi Nobody
Nozomi Nobody

Photo: ともまつりか
Model: Nozomi Nobody
Styling: Nozomi Nobody & ともまつりか
Text: Nozomi Nobody

 サイトを公開して、思いがけずたくさんの反響をもらった。写真に対する感想も文章に対する感想もいくつも届いた。とても嬉しく思っています。どうもありがとう。

 わたしはずっと、生きることが苦しかった。そして同じように、音楽をやっていてもいつもどこか苦しかった。思うようにいかないことばかりで、思うように出来ない自分を許せなくて、もどかしくて悔しくて、悲しかった。生きることも音楽も98%は苦しくて、ときどき、本当にときどき訪れる一瞬の光に救われてどうにか生き存えてきた。そんな風に思っている。

 だからわたしにとって人生とはまさに苦行のようであり、間違っても「人生って素晴らしい!」なんて思えなかった(un/baredの相方のともまつりかに「この世は生き地獄だ」と言ってひどく笑われたことがある)。そしてそう思えない自分に後ろめたさを感じていた。人生をちゃんと楽しめない自分は正しくない、ダメな人間なんじゃないか、そういう気持ちがあった。そしてそんなことを考えはじめると、人生はますます憂鬱だった。

 『100万回生きた猫』というドキュメンタリー映画がある。同名の絵本の作者である佐野洋子さんがガンで亡くなるまでの日々と、孤独や生きづらさを抱えた女性たちの日々が描かれている。この映画の中で佐野さんが、「人生なんてあんまりいいもんじゃないのよ」と明るくケラケラと言い放つシーンがある。ずっと生きることを肯定出来ず、そういう自分を肯定出来ずにいたわたしは、この言葉にどれだけ救われたか知れない。「あぁ人生を良いものだと思えなくてもいいのか」と心底安堵し、小さな映画館の一番うしろの席でひとりしずかに涙を流した。

 振り返ってみると、去年までの数年間は特に苦しかったように思う。歌えば歌うほど、作れば作るほど、頑張ろうとすればするほど、自分がどんどんすり減っていくのを感じた。わたしの身体は、出て行くばかりでちっとも満たされることがない穴の空いたバケツのようだとよく思った。そうして去年が終わる頃、たぶんそれらの蓄積がしずかに爆発し、限界を迎えた。“もうこれ以上は危ない”と自分ではっきりわかった。そうして頑張ることを一度やめ、自分を休ませようと決めたのだった。

 わたしはギターをあまり弾かなくなり、ライブの本数を減らした。本当に会いたいと思う人にだけ会い、本当に行きたいと思う場所にだけ行くようになった。出かけたくないときは予定をキャンセルすることを自分に許し、ひとり部屋でのんびり過ごした。食生活を変え、生活習慣を変えた。そうして少しずつ自分を回復させていった。

 そういう時間を過ごす中で、“自分がこれまでいかに自分自身を傷つけてきたか”ということに気が付いた。わたしは随分長い間、常に自分を疑い、否定してきた。「だからお前はダメなんだ」と自分に何度言ったことだろう。嫌が応でも受けてしまう外側からの傷に加え、内側からも自分を傷つけ、その傷を癒す機会も与えずにきたのだった。そのことにようやく気が付いたとき、自分を心底気の毒に、そして申し訳なく思った。

 今、わたしは自分に優しくする練習をしている。自分の思考や感情を否定しそうになるとき、一度立ち止まり、心の中に浮かんだそれらを反芻してみる。そして「そうか、まぁそういうこともあるかもね」と思ってみる。自分自身を放っておいてみる。感じたまま、思ったままにさせてみる。ただそれだけ。でもそれだけで随分と楽になったように思う。

 自分を許す。認める。受け入れる。
 言葉は何でもいい。
 それというのは自分を大切にすること、つまりは自分を愛することかもしれない。
 そんなことを最近はよく考える。

 佐野洋子さんが「人生なんてそんなにいいものじゃない」と大手を振って言ってくれたように、わたしも自分の中にあるこのぜんぶを迷うことなく言葉にしたい。どんな想いも考えも、それが自分の内側にあるものであれ外側にあるものであれ、否定することなくまずは一度受け止めたい。そこからはじめたい。

 un/baredでやっていきたいのはそういうことだ。いろんな生き方、在り方、考え方を、放っておき合いたい。そしてときどき交わったり話し合ったりしながら、知り合っていきたい。安心して裸になれる場所を作りたい。

 だからまずはわたしたちが裸でありたいと思う。

 そうしてそのうち、あなたのことも少しずつ、知っていきたい。

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