Vol.01 / 01 | un / bared
2020.01.14

Vol.01 / 01

Model : Sayoko Ozawa – Illustrator / Bassist (my letter)  twitter  instagram 
Photo: Rika Tomomatsu / Text: Nozomi Nobody

 さよこさんの身体はとても素敵だった。ふっくらと柔らかそうで角張ったところがひとつもなく、毛足の長い子犬とか綿菓子とか、そういう白くてふわふわしたものをわたしに連想させた。“おざわさよこ”という存在をそっくりそのまま具現化したようだと思った。

 撮影をしながら、わたしたち3人はわたしたちの身体について話した。お互いの身体の自分にない部分を羨み、そして一様に自分の身体に自信がないと告白をした。さよこさんは学生時代その自信のなさゆえに、修学旅行などの度に理由をつけてはひとりでシャワーを浴び、大浴場を避けていたらしい。「おばあちゃんとお母さんとお風呂入ったらふたりとも洋梨に脚生えたみたいなまったく同じ体型しとって、わたしもこうなるんやって自分の未来が見えた気がした」と言って屈託なく笑い、それから「だけど本当はもっと誰しも自分の身体を見せたって良かったんやなっていまは思う」と、ぽろっと言ったのだった。

 外国の街を歩けば、様々な体系の人たちがそれぞれの身体を惜しげなくさらしている。胸もお腹もお尻も脚も。堂々と。その姿はとても健全に見えるし、コンプレックスだらけの自分の目には眩しく映る。最近の海外ブランドの広告では、様々なバックグラウンドを持ったいろんな体系のモデルさんを見かけるようになり、“ダイバーシティ(多様性)”という言葉を頻繁に耳にするようにもなった。
 いろんな身体のいろんな美しさをもっと許容できる世の中になったらいい、身体だけに留まらず、いろんな在り方、いろんな美しさについても寛容でありたい、ということを話した。そういう想いを込めてわたしはVol.0で素肌をさらけ出す決意をしたのだし、そういう想いを込めてこれからもたくさんの言葉をこの場所で書いていきたいと思う。

 だけどー。

 だけど、同時にわたしは自分の中に染み付いて剥がれない“刷り込まれた美しさの価値観”の存在を見過ごすことができなかった。どんな姿形でもそれぞれに美しいと思う、あるいは美しいと思える自分でいたいと思う。その気持ちはまったく嘘じゃない。でも、街中で細くて綺麗な人を見かければ思わず横目で追いかけ、自分よりスタイルの良い友達に会えばなんとなく引け目を感じ、羨む気持ちが心のすみっこにひっそりと巣くう。そのことをよく知っている。

 顔、身体、肌や毛に至るまで、子供の頃からありとあらゆるところでさらされてきた美の在り方。つまらない下らないと心の中で一蹴するいっぽう、鏡を見ればもう少し痩せたい、もう少し胸があれば、と思い、そうしてときどき思い出したようにお風呂上がりにリンパマッサージをしてみたりするのだった。
 まったく矛盾している。
 だけどどちらの感情も間違いなく自分の中にあり、やっかいなことにそのどちらも否定することができなかった。「出来るだけ美しくありたい」「出来ればもう少し美しくなりたい」という気持ちと、ひとに対しても自分に対しても「いまのままで十分素敵、愛してる」と思う気持ちをどう両立すればいいんだろう。そんなことを考えた。

 撮影の数日後、上がってきた写真を見てさよこさんはとても喜んでくれた。さよこさんからのメッセージには、最近身体について落ち込むことが増えていたけど、写真を見て自分のことを見直せた、これからもっと歳を重ねてもこうしてときどき自分をちゃんと見つめてみようと思った、と書かれていた。そして最後に「ただ、今とはまた違う自分に会うために、ゆっくり身体鍛えよう、とは改めて思いました笑」と付け加えられていた。

 素直なかわいいひとだなと思うと同時に、そうかこれでいいんだ、と心が軽くなった。いまの自分だってけっこう悪くない、だけどもっと良い自分になれるかもしれない、なってみたいと思う、一見相反してみえるそれらの感情はあんがい矛盾しないのかもしれない、いずれにしてもその両方を持ち合わせているのは至極真っ当で人間らしいことじゃないかという気がした。そしてその説明の出来ない曖昧さ複雑さこそが、わたしたちを愛おしい存在たらしめているものなのかもしれないと思った。

 そのまんまの自分を受け入れ愛すること、だけど甘んじず向上心と好奇心を持ち続けること。
 やっぱり矛盾しているのだろうか。わからない。だけどそのどちらも、いつも忘れずに心にとめておきたいと背筋を伸ばす新しい年のはじめ。わたしの部屋の壁には、年末に届いたさよこさんのカレンダーがかけられた。
 いつかun/baredで写真展をやりたい、そしてそのときにはお互いばっちり身体を作ってともまつに写真を撮ってもらいましょうと、さよこさんには返事を送った。

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