Vol.01 / 03 | un / bared
2020.02.17 un / bared

Vol.01 / 03

Model : Sayoko Ozawa – Illustrator / Bassist (my letter)  twitter  instagram
Photo: Rika Tomomatsu / Text: Nozomi Nobody

 この数年、Webでの連載や自分の作品など、文章を書く機会が増えた。文章を書くことは音楽を作ることとてもよく似ているなといつも思う。だけど、文章/言葉という媒体を通すことで、音楽を通すのとはまた違う自分の側面がはらはらと解け落ちていくので、その発見がいまはとても楽しい。

 同時に、言葉についてより真剣に考えるようになった。「ちゃんと言葉を持ちたい」ということを強く思うようになった。自分が生きる世界でいま起こっているありとあらゆることーーよくわからないこと、納得の出来ないこと、触れるのも辛いくらい悲しいことーーそういう物事ともっとちゃんと向き合い関わっていきたい、いかなくちゃ、と思う。そして「じゃぁどうやって」とその術を考えたとき、思い浮かんだのが“言葉”と“知識”だった。わたしが持ちうる闘うための武器。物事について知り、学び、噛み砕いて、ひとりよがりではない“伝えるための言葉”に変換する。そういうことが必要だと思った。

 個人的な話になるけれど、わたしはずっと自分のために音楽を作ってきた。生きていることが苦しくて、わけもわからずとにかくいろんなことが怖くて不安で、そういう気持ちをどうにかしてくれるのが音楽だった。自己表現とか存在証明とかよく言われるけれど、それに近いことだったと思う。わたしにとって音楽は、自分が自分の存在を許すためのほとんど唯一の手段だった。

 “表現”について話したとき、さよこさんは「ずっと自分の形がわからない」「絵を描き自分と向き合うことは自分のための救い」だと話してくれた。わたしは、あぁそれはとてもよくわかるなとうなずきながら聞いていた。

 さよこさんはだけど、こう続けた。

 「でもそれだけじゃあんまり伝わらんような気が最近はしていて。もう少し祈りみたいなものがあるといい…。自分のためにも描くけど、これ見てこんな風に感じる人がいたらいいなとか。今日こういう風に生きて、これが綺麗だったよとか。そういうことを絵に描いてそれが誰かの生活の中にあったときに、そのひとが誰かに優しくなったり、寂しくなくなったりとか、そういうことはできるのかなって思う。」

 ーー祈り。

 この数週間、ずっとこの言葉のことを考えていた。

 おこがましいかもしれないけど、ここで書くわたしの文章には祈りのようなものが入っていると思う。なぜなら「伝えたい」と思って書いているからだ。自分のからだの真ん中にある想いをどの角度からどう切り取ったら伝わるか、わかりやすいかということをじっと考え、文字に起こしていく。自分のためというより、外側の世界と関わるためのいわばコミュニケーションのような。そういう意味で、わたしにとって文章を書くことと音楽を作ることはまったく性質の異なる行為だと言える。


 祈り。
 それはたぶん、誰かを想うことだ。創作に関していうなら、作っている作品のその先を想像してみること。自分の生み出したものが、誰かの何かになること。どんな風に響き、どんな風に触れられるか。そうしてそこにどんな感情が生まれるのか。そういうことをイメージして、「こんな風だったらいいな」という想いを込めて作ること。それが祈りなんじゃないだろうか。

 (これを書きながら、ミュージシャン仲間には「なにを今さら当たり前のことを」と思われるのだろうなと、音楽家としての自分の未熟さを恥じているけれど、恥ずかしいこともぜんぶ書くと決めているので仕方がない)

 だけど思うに、それはあんまり特別なことじゃないのかもしれない。なにも表現だけに限ったことじゃなく、あらゆる行為に込められることなのかもしれない。例えばごはんを作るとか、一言メッセージを送るとか、ちょっと肩に触れるとか、今日着て行く服を選ぶとか。そういうなんでもない日々の行動の中に小さな祈りが含まれていたら。それはきっとじんわりあったかくて優しくて、懐かしい香りのするような素敵なことのはずだ。

 以前、あるアーティストがインタビューで「想像力は思いやりだ」と言っていた。わたしが折に触れて噛み締めている言葉だ。その手先から生まれる表現、あるいは行為の先にいる誰かのことを想像してみること。それは思いやりであり、愛情であり、希望だ。

 わたしがわたしのまんまであることで、そしてそれを書くことで、あなたがあなたのまんまであれるように。そんなささやかな祈りを込めてこの文章をそっとここに置く。と同時に、次に作るアルバムにはわたしなりの祈りを込めたいと、そんなことを考えている。

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